天穹ノ彼方の錬星郷「ソラカナ」攻略まとめ Wiki

元老院第三席輝星院家の次期当主である彼女は、周囲から
当然のように特別の扱いを受ける。周囲にいるのは自分に
付属する価値に群がる有象無象、あるいは敵か、それに限
りなく近い気の許せない相手ばかり。それでも彼女は悠然
とした笑みを崩すことはない。弱みを見せればつけいられ
るだけ。強さのみがこの世界を生きるために必要なもの。
ずっとそうやって弱さを遠ざけてきた彼女だが、少しず
つ、その心に変化が生じ始めていた。自分が、どんな風に
変わり始めているのか。それがどんな結果に繋がるのか。
それは、まだアルネ自身知らない。

ずっと、アルネは弱さを遠ざけてきた。それは誰かに頼る
心を凍てつかせることであり、失いたくない存在から離れ
ることであり、誰ひとりとして並び立つことのない孤高の
道をゆくことであり、他の誰でもなく自分が未来を切り開
くという覚悟であった。けれど、彼女を支えようとする人
が、彼女の手を握ろうとする人が、彼女に追い付こうとす
る人が、彼女を守ろうとする人が、愛おしい宝石だからこ
そ箱に閉じ込め手の届かない場所にしまっておきたいとい
う彼女の願いを否定し、その強さの鍍金を剥がそうとする
するのだった。

"彼"との出会いから、多くの迷いが生まれた。大切だから
こそ遠ざけてきた宝石。もはや醜く薄汚れた自分も触れて
はならないとすら思っていた宝物。けれど、いつしか宝石
は箱の中を飛び出して、そちらから自分の方にやってく
る。それを拒絶できるほどアルネは強くなかった。そもそ
も、自分が求めた強さとはなんだったのか。改めてアルネ
は自問する。復習か、正義か、愛や友情か……そのどれで
もあるような気がすると、そのどれでもないような気がす
る。迷いは強さから一番強い感情だと知りながら、アルネ
は今日も自問を続ける。

陽の当たる場所に背を向け、暗くおぞましい暗闇へ。今の
世界を支配するなにかがそこにあるというのならば、自ら
もその闇の中をゆくしかない。そう決意してから、どれほ
どの時間が経ったか……アルネはこれまでの道を振り返る
が、後にも先にも見えるものなどなにもない。それでい
い、それでも進むことで強さが得られるのだと弱い心を押
し殺してきた。けれど気づいてしまった。光はいつのまに
か、きつく握りしめた手の中にあったのだと。手を開け
ば、そこに輝きが宿る……気づきながらも、アルネはま
だ、その手を開くことが出来ずにいた。